未分類 海浜喜劇の流行と『海浜の女王』
日本映画において、海辺を舞台に若い男女の恋愛模様を描く「海浜喜劇」というジャンルは、『アマチュア倶楽部』(1920)によって誕生したとされる。原作者の谷崎潤一郎が、当時の日本で評判を呼んでいたマック・セネットの「Bathing Beauties」と呼ばれる水着美人が登場する喜劇映画に傾倒していたことはよく知られている。その谷崎が義妹の和嶋せい子に葉山三千子の芸名を与え、水着姿で主演させたことも有名な話である。鎌倉由比ヶ浜の海水浴場を舞台にしたこのスラップスティック・コメディは、アメリカ映画の模倣ではあったものの、海水浴という近代的レジャーのイメージを大衆に広める役割を果たしたといえる。水着をまとった葉山三千子の肉体美が観衆の関心を集めたように、「海浜喜劇」は水着姿の女優を見どころの一つとして定着していった。その背景には、女性の身体を表象するメディアとして当時の映画に寄せられた観客の期待があり、海辺という開放的な空間はそうした表象を可能にする舞台であった1。しかしながら、女性の肉体を興行上の魅力として利用する手法は、裏を返せば「水着の女優を出せば客が入る」という商業的戦略でもあっただろう...
