神戸映画資料館

研究ノート

『霧笛』鑑賞記~村田実と中野英治、そして志賀暁子~

12月23日、神戸映画資料館にて念願の村田実監督『霧笛』(1934)を鑑賞した。明治期の外人居留地を舞台に、異人のクウパー(菅井一郎)のもとで下男として働く元スリの千代吉(中野英治)は、喧嘩の強さから地元のやくざを取り仕切る豚常(村田宏寿)に目をつけられる。千代吉は豚常の縄張りのチャブ屋でらしゃめんのお花(志賀暁子)と出会い惹かれ合うが、お花がクウパーの愛人であることを知り、やがてお花をめぐって千代吉とクウパーは対決する。ざっと筋書きを紹介した通り、登場人物の関係性において中心となっているのは千代吉とクウパー、千代吉とお花ではあるが、千代吉に因縁をつけて喧嘩を挑む地元のやくざ、代官坂の富(小坂信夫)の存在も忘れがたい。千代吉との喧嘩に負け、弟分となって千代吉の危機を救おうとする富は、劇中の台詞いわく「ぽかぽかやって」勝てば男同士のヒエラルキーが決まる単純さが見ていて一種の心地よさがあった。本作の主眼はお花をめぐる三角関係というよりも、千代吉のクウパーに対する感情の変化である。クウパーの下男として忠実に働き、クウパーの癖さえ身につくほどになった千代吉が、お花の相手がクウパーだったと知るに...
研究ノート

神戸クラシックコメディ映画祭2020 『國士無双』・『続清水港』解説再録

片岡千恵蔵略歴1903年3月30日、群馬県新田郡藪塚本町(現在の群馬県太田市藪塚町)に植木菊太郎、かつの長男として生まれる。本名は植木正義。2歳のときに母を亡くし、以後は祖母の手で育てられた。祖母に連れられて上京したあとは東京府東京市麻布区(現在の東京都港区麻布)の父の住居に移り住んでいる。1915年には11代片岡仁左衛門主宰の片岡少年劇に加入、片岡十八郎の芸名で初舞台を踏む。片岡少年劇が解散すると仁左衛門の直弟子として大歌舞伎へと舞台を移す。このときの一座にのちの嵐寛寿郎がいた。1923年、畑中蓼坡の新劇協会に出入りしていた関係で小笠原明峰が設立した小笠原プロダクションの第2回作品に植木進の芸名で参加、映画界への第一歩を踏み出す。初出演作は『三色すみれ』という現代劇で大学生を演じた。なお、当時恋愛関係にあった新橋の雛妓が関東大震災で死亡(病死の説もあり)しており、その家の養子に入っている。1926年、直木三十五の紹介でマキノ・プロダクションに入社野村芳亭と知り合った千恵蔵は1925年に松竹蒲田入社の話がほぼまとまっていたが、野村の松竹下加茂移動で御破算になった。。翌年に片岡千恵蔵の芸...